旭川エリアの雪に魅せられた3人が語る
星野佳路×佐々木大輔×若山泰生

前編
北海道パウダーベルトという構想と山を滑るマナー(1/3)

星野リゾートではトマムの他に、2018年からOMO7旭川の運営もスタートしました。
旭川〜トマムをつなぐ一帯を「北海道パウダーベルト」として世界に発信してゆくとのことですが、
そこにはどんな背景があったのですか?

星野
北海道観光の中で夏は旭川や富良野に人が周遊する観光スタイルが成り立っていますが、冬になった途端にニセコなど西側が集客の中心になります。私は2004年からトマムを経営していて、どうしたら冬に道東にも人が来ていただけるか、常に考えてきました。雪の量は少ないかもしれないけれども、専門家に聞くと、こちらの雪は質がいいと言う。量は少なくても質がいい。それはまさに観光の価値そのもの。雪の質がいいのなら、もっと注目していただくことができるのでは、と思いました。たまたま旭川のホテルを運営することになり、トマムから旭川まで東側のベルト状の地域にパウダースノーが降り注いでいるイメージを出そうと考えています。

北海道パウダーベルトとは、北海道の中央に位置し、世界でも有数のパウダースノーを楽しめる、トマム、富良野、カムイ、黒岳などのスキーエリアの総称です。険しい雪山から、ローカルのスキー場、リゾートのスキー場まで、世界の山を知る上級者から、バックカントリー初心者まで、冬山を十分にお楽みいただける環境が整っています。

北海道の各地を滑っている大輔さんから見ると、旭川エリアというのはどういった位置付けですか?

大輔
僕はバックカントリーをガイドするときにベースとするのが、小樽、札幌、旭川なんですよ。旭川だと、幌加内(ほろかない)あたりに行くことが多いんです。でも最近、雪のクオリティという意味では、幌加内もちょっと重くなってきていて、質のいい雪というと、旭川、旭岳、黒岳、富良野、トマム近辺という感覚があります。海外の方から「JAPOW」呼ばれるパウダースノーの最高級ブランドに、「パウダーベルト」と呼ぶエリアは入るかなと思います。ただちょっと厳しめな意見でいうと、トマムあたりはちょっと雪の量が減る。ガイドの間ではここら辺のことを「石勝(せきしょう)高原」と呼んでいるんです。雪の量は少ないけれども、気温が上がらないエリア。だから長く、いい雪がキープされるんですね。雪質においては、JAPOWよりもワンランク上、「羽パウ」と言ったりしますね。

若山さんはその雪質もあって、首都圏から長く旭川エリアに通っているんですよね。
どんなところが気に入っていますか?

若山
旭川に通うようになって7年くらい経ちます。旭川や富良野に住んでいるスキーヤー、スノーボーダーと一緒に滑ることが多くて、すっかり虜になりました。この地域はあまり人が多くないのがいいですね。最近どうしても外国人が増えて、日本人だけのルールでは通らないようなエリアが増えているけれど、ここはまだ自由さや、昔ながらな雰囲気がある。それが個人的には好きですね。
星野
ローカルの常識が通用しているということですか?
若山
外国人が増えるとどうしても彼らのやり方というのがあるから、そうすると、日本人が今までやっていた方法とは違ったりするんですね。郷に入れば郷に従え、と思うけれども、そうもいかなかったりするんですよね。

トマムの上質なパウダースノーで雪煙を巻き上げる若山泰生。シーズン中、頻繁に北海道に通う。年間滑走日数100日を目指すほど滑り好き。

星野
具体的には何が違うんですか?
大輔
バックカントリーの例だと、彼らは斜面をトラバースしてしまうことが多いんです。上から下まで、まっすぐ滑ればみんな幸せに滑れるのに、斜めに滑ってしまうからみんなで斜面をシェアできないんですよ。
若山
あとは滑る面を登ってしまったり。僕らは滑る面は綺麗に残しておきたいから、ちょっと遠回りしてでも空けて登るのに、みんな滑る面を登るから、滑る面がギッタギタになっていたりするんです。
大輔
要は外国の人たちは慣れてないんですよ。
雪があまり降らないオーストラリアの人だったり。
星野
それは伝えれば納得してくれるのではないですか?
大輔
そうですね。
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