スタッフブログ

9月9日の雲海テラス トマム産雲海と悪天候型雲海

今朝の雲海テラスは外気温12℃。早朝のテラス前には、発生プロセスの全く異なる「トマム産雲海」と「悪天候型雲海」が上下に重なる、見事な二層構造の雲海が広がっていました。しかし、西から雨雲が接近するにつれて雲層は急速に厚みを増し、やがてテラス全体が静かな「雲中」へと包み込まれていきました。一見すると視界を遮る真っ白な世界への変化ですが、その裏側では大気の物理メカニズムが織りなす極めて稀有で美しいドラマが繰り広げられた朝となりました。

雲が発生する基本原理は、大気が抱えられる水蒸気の限界を超え、水滴へと変化することにあります。今朝はこの結露に至るアプローチが、上下ふたつの層でそれぞれ異なる現象として観察できました。

下層を覆っていたのは、トマムの地形が生み出すトマム産雲海です。放射霧と蒸気霧の双方がこの「トマム産」に該当しますが、今朝はこれから降る雨の前兆として大気に大量の湿気が補給されたことで発生した蒸気霧のタイプでした。大気中の水蒸気量が急増したことで過飽和状態が加速し、温かい湯気が立ち上るように下から成長した雲海は、やがてザ・タワーの半ばまでをすっぽりと包み込む重厚な姿を見せました。

一方で、標高1,000m付近やオダッシュ山、狩振岳の山肌を美しく撫でていたのが滑昇霧です。西からの風が山肌に衝突して斜面を駆け上がり、空気が断熱冷却されることで発生する雲です。今朝は地表から上空まで風向が西風で揃っており、風のシアー(高度による風の変化)が起きなかったため、この異なる二つの雲が上下で乱されることなく、整然と西から東へ流れゆく立体的な層を作り出していました。雲海の上に山頂だけを覗かせる日高山脈の雄姿は、その大気の高低差を力強く物語っていました。

上空をびっしりと覆う雲によって太陽光による消散(ドライアウト)が阻まれたため、雲海は形を崩すことなく保たれ、やがて接近した雨雲と一体化してテラスを包み込む強めの霧雨へと変化していきました。通常、天候が下り坂に向かう場面では上空の雲に覆われて終わることが多く、放射冷却を主体とする静かな雲海発生時にはこれほどダイナミックな湿気の流入は見られません。今朝は、雨雲接近による強力な湿度補給と風系の安定という複数の条件が合致したことで、局地的な「トマム産雲海」と広域の気圧配置がもたらす「悪天候型雲海」を同時に見ることができる数少ない稀有な朝となりました。

こうした真っ白な雲の中に包まれる朝だからこそ、現場の生の情報が真価を発揮します。今朝の雲海ガイドには100名を超える多くのお客様がお集まりになりました。目の前で起きている複雑な物理現象を現地ガイドの解説を通して知ることで、単なる視界不良ではなく「大気のリアルタイムな科学ショー」としてお楽しみいただき、皆様とても熱心に耳を傾けていらっしゃいました。現地の空気感を肌で感じているガイドの言葉だからこそ伝わる圧倒的な信頼感と面白さが、今朝のテラスに広がっていました。

「なぜ雲ができるのか」という根本の仕組みから紐解くことで、ただの白い霧に見える景色が、大気の動きが視覚化された壮大な観察体験へと変わります。悪天候の手前でしか出会えない大気の立体美を感じられる、深く味わい深い朝となりました。明日以降の雲海の発生に期待して、ここで擱筆させていただきます。

雲海テラススタッフ 藤田

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□□■□■□■□■□■□

日々表情を変えるトマム山からの景色やCloud9の散策など、朝の特別な時間をぜひ雲海テラスでお過ごしください。

毎日15:00までに、翌朝の「雲海予報」を発表いたします。

一覧に戻る

最新の記事

月別アーカイブ